快晴の朝はことに大きな音をたてて、山々の木の上を渡る嵐がピタッと止んだ。凍えるような冷気のために、夜半に降った雪は、梢にしがみついたままで輝いている。
湛水面積1.5km2の広いダム湖は、青く澄みきった水をいっぱいに湛えてじっと動かない。ときおりさざ波の上の光がキラキラッと跳ねる。
それにしても、この山の空気の澄みようって何だろう。煤煙や排気ガスのない地球って、実はこんなに澄んだ空気や水のはずなのに…。
右岸、牛岳の裏から利賀へ向かう国道471号にも、左岸岐阜へつながる156号にも、まだ自動車の音がしない。この澄みきった大景観を、今のうちにひとりじめにしておこう。