写真で見る砺波図書館

新たな文教ゾーンの創出

砺波チューリップ公園をはじめ、砺波市文化会館、砺波市美術館、チューリップ四季彩館など、
魅力的な観光施設や社会教育施設が立地する一角に、新たな文化交流の拠点として整備しました。
これらの周辺施設との相互連携を図る学びの場として、市民の皆さんが立ち寄り、
世代を越えた交流が創出できる「学びをつなぐ図書館」となっていくことを期待しています。

大屋根の下のワンルームの図書館
設計者の想い

砺波平野は比類なき静かな絶景である。
加賀百万石を支える穀倉地帯であった散居村の様が今も美しい田園風景として継承されている。
ここに住む人々の中に宿る合理性と豊かな心情を兼ね備えた高い品格に由来するものだと、
あずまだちと呼ばれるその母屋の佇まいにその所以を感じた。
そうした心象を抱きながら市内を縦断する幹線道路に面する「大屋根の下のワンルームの図書館」を構想した。
大屋根はその大きさとともに緩やかなうねりをもって砺波市の新たなランドマークとなることを企図した。
それはあずまだちの現代的な解釈であると同時に、未来に飛翔するペーガソスの翼のように
市民の教養の象徴でもある。
そして、西側の通りと平行に低く構えた軒下から館内の様子を通りに開くように設えた。
その館内は、大屋根のうねりが反転して表出するひとつながりの空間である。
天井の傾斜の強い北側では市民が立ち寄り触れ合うことから生まれるにぎわいを誘発しながら、
奥に進むにしたがって緩くなる。
子どもから高齢者まで来館するすべての市民は、
濃密な木の温もりと高窓から注ぐ柔らかな自然の光に包まれる。
天井の傾斜の和らぎとともに知の世界に畏敬の念を抱きながらも
本の森の静けさに身を置く安堵感が得られるように仕掛けている。
2方の階段から上がる上階もまたひとつながりの空間を共有しながら館内を見晴らすことができる。
そこから眺める階下の床にはチューリップの写真を拡大しモザイク状にカーペットを敷き詰めた。
そもそも学ぶことは楽しいことである。
しかもその様は砺波市の図書館だからこそ可能な設えである。
従前の図書館が誕生した頃、富山県は全ての自治体が図書館を設置した唯一の県であった。
新たな砺波市立砺波図書館の誕生はその崇高さが継承されることを意味している。

建築概要
所在地:富山県砺波市幸町4番1号
敷地面積:7,446.84m2
建築面積:2,819.48m2
延床面積:3,342.62m2
階数:地上2階
構造:鉄筋コンクリート造一部鉄骨造
基本設計期間:2016.5-2017.3
実施設計期間:2017.4-2018.3
工事期間:2018.6-2020.7
収蔵可能冊数
開架:200,000冊
閉架:165,000冊
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設計
三上建築事務所・押田建築設計事務所共同企業体
総括:益子一彦/三上建築事務所
建築:株式会社 三上建築事務所(担当:冨田武俊 真崎学 高麗夏実)
株式会社 押田建築設計事務所(担当:浜潟幸生)
構造:株式会社 三上建築事務所(担当:倉持勝己 川又祐介)
電気設備:株式会社 明野設備研究所(担当:川島孝康)
機械設備:株式会社 明野設備研究所(担当:松田真明 中村仁子)
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監理
三上建築事務所・押田建築設計事務所共同企業体
建築:株式会社 三上建築事務所(担当:冨田武俊)
株式会社 押田建築設計事務所(担当:浜潟幸生)
構造:株式会社 三上建築事務所(担当:倉持勝己)
電気設備:株式会社 押田建築設計事務所(担当:奥村昌之)
機械設備:株式会社 明野設備研究所(担当:松田真明)
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施工
建築:佐藤工業・砺波工業共同企業体
電気:北陸電気工事・川田電気商会共同企業体
機械:菱機・寺田共同企業体
地中熱:菱機・デムラ共同企業体
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照明デザイン:株式会社 近田玲子デザイン事務所
写真:新写真工房 堀内広治