戦国時代の馬

 増山城跡で解説をしていると「この山を馬が上り下りできたのですか?」と問われた事が何度かあったが、それは現代の馬の大きさを思っての疑問である。
 古代から江戸時代までの日本馬は小さく、標準として高さ四尺(約121センチメートル)程度という。また戦国時代から江戸初期の50頭あまりについて調べたというものからみても、平均130センチ前後でしかない。ちなみにヨーロッパ中世の軍馬は、平均155センチというからずいぶん小さい。
 では、そんな小さな馬が戦争に使えたのか疑問になる。
 当時は蹄鉄も使われてなかったから、鎧武者を乗せて蹄に重量をかけて踏み切る事は難しかったという学者もいるが、それでも馬がけっこう戦闘に使われていたことは事実のようだ。騎馬の利点は逃げる敵を追いかけるときと自分が逃げるときだそうだ。
 しかし、より役に立ったのは戦闘手段としてよりも、人や物を運ぶ輸送手段としてであった。甲府市の武田居館址から出た馬骨を調べると、前脚の筋肉が発達していて重量物を載せて斜面を上り下りしていた事が窺えるという。
 そんな事を知ると、往時の増山城をポニークラスの小さな馬が荷物を運んでいた様をふと想像してしまった。 


曲輪の会事務局